極上のシルキーを味わいたい。ラグジュアリー・クーペ、CL600
以前にも書きましたが、レシプロエンジンというのはピストンが往復する構造上どうしても「振動」が発生します。4サイクルエンジンは一気筒当たりクランクが二回転、つまり720度回転するごとに一回爆発するわけですから、たとえば三気筒エンジンなどではこれを240度ずつずらせば等間隔で爆発するということになります。
理想の直列六気筒、二つでV型十二気筒
クランク軸の側から見ると、三つのピストンがぐるぐるとちょうどエグザイルの人みたいな動きで上下するんですね。これでピストンが上下する際に発生する一次振動、さらにクランクとの関係でピストンがシリンダー側面を押す際に発生する二次振動をうまく打ち消し合わせることができるわけですが、エンジンを真上から見たときに全体を捻るように働く力、いわゆる「偶力」というものは残ってくるわけです。さらにこれを打ち消すためにはこの三気筒エンジンを二つ一直線につなげてやる、つまり直列六気筒エンジンにすればいいわけですね。
そう、ストレートシックスというのはこのように構造上あらゆる振動をキャンセルすることができる完璧なレイアウトなんです。
そしてそれを二つ、V型に合体させてしまえば…。V型十二気筒エンジン。それは自動車用エンジンとしては別格の、怪物のような、また貴族のような存在です。確かにまだ上にベイロンのW型十六気筒とか、あるいはチゼータのV型十六気筒といったちょっと頭のおかしな奴らも居ますが、そういうのを別にしてほぼ頂点に君臨しているといって差し支えないでしょう。
気筒数の多さからくるシルキーな回転
十二気筒でも4サイクルというところは当然変わりません。それぞれの気筒は720度に一回の爆発です。しかしそれが12個もあるのですから、クランク軸の回転で60度に一回爆発する勘定になります。
言うまでもなく、爆発の間隔が短ければ短いほどエンジンはトルク変動が少なく、つまりスムーズに回転するようになります。よく「モーターのようにスムーズな…」という例えがありますが、電動モーターでも極数を増やすと回転ムラが少なくなるわけです。ましてレシプロエンジンでは、ですね。
と、ここまで書くと「V12サイコー!フィットもカローラもクルマはみんな十二気筒にすればいいじゃん!」と思われるかもしれませんが(思わない思わない)、もちろんいいことばかりではありません。
まず、部品点数が多いのでべらぼうにコストが高くなります。そしてある程度の排気量がないと気筒当たりの容積、いわゆる釜が小さくなって効率が悪くなります。さらにエンジン自体が大きくなるので車体がコンパクトなクルマにはそもそも積めません。つまりV型十二気筒は「ボディも排気量も大きくて、さらにコストをかけても怒られないクルマ」、そう、スーパーカーとか超高級車にしか載せられないのですね。
まあいろいろごちゃごちゃ書いてきましたけど、一言で言うと「十二気筒は偉い」のです。
CL600、孤高のラグジュアリー・クーペ
さて、今回はメルセデス・ベンツCL600です。C215と呼ばれるこのモデルは、1996年に登場したCLクラスの二代目にあたります。1999年から2005年にかけて生産されましたが、2002年を境に前期型と後期型に分かれます。ご紹介するのは前期型で、M137と呼ばれる5.8リッターSOHCのV12エンジンが搭載されています。
367ps/54.0kgmを発生するこのエンジン、負荷が少ないときには片側バンク6気筒を停止させるシステム(シリンダー・カットオフ・システム)を標準で装備しています。
思えば1991年、W140型の600SELがメルセデス・ベンツ初のV12で登場したのをCGTVとかで見たときには「うわー、すげー、重さ2トンで400馬力かぁ」なんて思ったものです。そして程なく国内のあちこちで見かけるようになって「結構売れてるなあ」なんて感じました。しかし当のヨーロッパではエンジンの大きさに加えてボディのごつさ、重さなんかから「環境破壊車」なんてディスられたりもしたみたいです。そういうこともあって、こういうシリンダー・カットオフ・システムなんていうものも開発しないといけなかったんでしょうね。
ともあれ、とにかくシルキーかつパワフルな5.8リッターV12エンジンの、まるで天上から湧き出でてくるような極上のトルクを味わいつつ、その美しいボディラインを愛でるカーライフ(って、なんかマンションポエムみたいですね)。CL600に乗ってみませんか?
[ライター/小嶋あきら]
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