2020-08-29

ポルシェ・カイエン ユーザーは潜在的にこのカテゴリーを待っていた?

日産のJUKEがデビューしたとき、「コンパクトSUV」という説明に「これのどこがコンパクトやねん!」と突っ込んでしまったのですが、カイエンを見ると「ああ、JUKEはやっぱりコンパクトでした」と納得してしまいます。



国内のミニバンを見て「大きいですやん」と思ってて、アメリカのバンを見て納得する、そんな感じですね。SUVって、大きく見えますよね。カイエンは実際に大きいですけど。やっぱり高さがある分スポーツカーとかと比べると大きいなあという印象があります。



最近のスポーツカーは重い?




スポーツカー好きはやはり軽量コンパクトな扱いやすいサイズを好みがちですよね。加速にしても減速にしても軽い方が慣性力が小さいのは当然ですし、コーナーで襲いかかる遠心力も軽くてすみますし。よく「手の内に収まるサイズ感」なんていいます。まあクルマを包み込めるほど大きな手の人はそうそう居ないでしょうけどね。そういう意味ではなく、なんとなく自分の技量でコントロールし切れそうな大きさ、ですね。



しかし最近のスポーツカーはそもそも大きくなってますよね。日産のR35スカイラインは1.7トンほどありますし、ポルシェの911だって1.6トンくらいあります。さらにGT寄りのパナメーラなんて1.9トン超えですからね。



強力なエンジンと高度な電子装備でこれらを制御して、より高い次元で走らせてしまうのが現代のスポーツカーなんですね、きっと。



軽量コンパクトを武器に直感的にドライバーがコントロールするスポーティさとは別に、クルマ側が積極的に関与しつつ高い運動性と快適性を提供するスタイルのスポーティさというのがあるのでしょう。



新しい時代に生き残るスポーツカーなのか?




近ごろはエコだとか経済性だとかそういった理屈でクルマを評価しようとする流れが強くなったと感じます。居住性の高いゆったりとしたボディに、燃費の良いダウンサイジングされたエンジン。近頃の賢いターボは排気量の小ささを感じさせません。そういう正しい「いいクルマ」がもてはやされる世の中です。



そんななか、大きな排気量でコンパクトなボディ、基本的に二人乗り、という楽しく美しく官能的なスポーツカーは「この遊びグルマめ!」という視線に晒されるというか、生きづらさみたいなのを感じるシーンもあるのではないかと思います。しかしこのカイエンなどは、その辺り実に上手く生き抜いて行けそうな予感がします。とりあえず室内も広く荷物も積めて、家族の誰からも不満が出ない快適なクルマ。しかし性能はやはりポルシェ、という部分でドライバーも嬉しくなる。楽しめる。なんかその、ポルシェって良い鉱脈を掘り当てたよね、って感じがします。



BMWのX5が出たときに「ああ、そういう方向に行くのですね」って感じでしたが、ポルシェからカイエン、というのは少し驚きました。スーパーカーブームの頃にランボルギーニ・チーターを見たときのような、っていうとちょっと大袈裟ですけど。



それにしてもBMWはX5を「スポーツ・アクティビティ・ビークル」なんて名付けたり、ポルシェもカイエンを「新しい形のスポーツカー」と呼んだり、どちらもSUVと呼ばれるのをめっちゃ嫌がってる感じですね。そんな既存のカテゴリーで括ってくれるな、ってことなんでしょうか。



時代はカイエンを待っていた?






そんな感じでポルシェ・カイエン、デビュー当時こそ「これなんやねん?」でしたけど、その後アルファ・ロメオやランボルギーニ、さらにロールス・ロイスまでがこのSUV市場に参入してくるわけですから、ポルシェのカイエンはきっと製品として正解やったんでしょうね。たとえばマツダのロードスターのように、実はユーザーはこのカテゴリーを待っていた、というか。



新しい流れ、カテゴリーを作ったのはたぶんX5だったのでしょう。しかしその後にスポーツカーメーカーが続々とSUVを出してきた、その先駆けはもしかしたらカイエンだったのかもしれないなあなんて最近そう思います。



[ライター/小嶋あきら]

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